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「喉が、かわきませんか?」
目を覚ますとそこはすでに自宅ではなかった。
拘束からも解き放たれている。
そこは、妙に赤い部屋。ベルベットだろうか。深い、深い血のような赤色。

気付けば全裸で、妙に豪華なベッドに横たわっていた。
問いかけたのは、Mr.Rとかいう妙な名前の男のようだ。
喉は、ひどく渇いている。
昨日佐伯にワインを口移しで無理やり飲まされてから、そういえば何も飲んでいなかった。
口をぱくぱくと動かすが、どうしてだか、声にならなかった。
喉が渇きすぎて。
・・・潤したい。
欲望が、湧いてくる。
潤したい。

Mr.Rが、真っ赤に熟れた柘榴を手に持っていた。
のどが、鳴る。
皮手袋をはめたまま、柘榴がMr.Rの口に運ばれるのを、飢えた唇を半開きにしながら見ていた。
・・・潤したい。
その甘酸っぱい果汁を、飲みたい。
Mr.Rが、その実を美味しそうに噛み締めた。
また、のどが鳴る。
赤い果汁がしたたる。
「貴方も、食べたい?」
半身を起こして、Mr.Rのほうへと向き直った。
吐息がもれる。
Mr.Rの赤い唇が果汁で濡れている。
・・・飲みたい。
Mr.Rがにやりと笑って、唇を重ねてきた。
甘酸っぱい果汁が、御堂の口の中に広がる。
その香りに、ぞくりとなった。
・・・美味しい。
喉が、身体が、強い酒でも飲んだかのように焼け付く。
熱い。
もっと。
もっと。
もっと味わいたくて、果実を見つめた。
Mr,Rがまた果実を齧る。
そうして唇を重ねる。
また、齧る。
重ねる。
気付けば、舌を絡めて深く深く唇を貪りあっていた。
「・・・あ・・・」
唇の柔らかい感触にどうしようもなく、身体が煽られる。
甘酸っぱい香りが、さらにそれを煽る。
みっともなく立ち上がる身体に気付いて、とっさに唇を離した。
けれどMr.Rは優しく微笑む。
「ここにはあなたの痴態を咎めるものなど誰もいない。
快楽のすべてがここでは肯定されるのです。
ほら、何も考えたくないのでしょう?
貴方の中に生まれたその快楽を、否定せずに思う存分に味わうといい」

そういうと、また深く唇を重ねる。
Mr.Rが帽子をそっとベッドの端に置くのが見えた。
やさしくやさしく、唇をついばむ。
息がどんどん乱れていく。
頭がぼうっとなって、混乱する。
・・・欲しい。
渇きが広がる。
もっともっと欲しい。
喉の渇きはいつしか貪婪な欲望へと姿を変えていた。
Mr.Rの手が身体の芯をまさぐり始めた。
革の手袋の冷たさが、いつもとは違った快感を煽る。
「あ・・・ん・・・」
どんどんと硬くなっていくソレを、Mr.Rは絶妙な加減で扱く。
・・・気持ちいい。
佐伯に覚えこまされた快楽の道筋は、いつしか後ろに続くことを求めだしている。
「んんっ。あ・・・」
「ねえ。気持ちいいでしょう?」
Mr.Rの声が耳元で響く。
思わず佐伯の声がダブるように重なり、否定するように首を振った。
「言ったでしょう?
ここには貴方を否定するものは何もない。
怯える必要はない。
ねえ、教えて?貴方の本当の欲望を。
そうすれば、最高の快楽を、あたえてあげましょう・・・」
耳元に届く、ねっとりとしたその促しに、身が震える。
むっとするほどの、果実の甘い香りが、理性を溶かしていく。
変わりに、引き摺り出されるのは、はらわたの匂いまでしそうなほどの、熱い、欲望。
手袋の先が、アヌスの周りを、そっと撫でる。
それだけでびくびくと身体が震えた。
「・・・して、欲しい・・・」
うわごとのようにそういった。
Mr.Rが本当に嬉しそうな笑みを浮かべて、
「よく出来ました」
御堂の欲望を肯定し、そしてその手を深く深く差し込んだ。
首筋を、舌が這う。
一方の手は前をイケないくらいに柔く扱き、
もう一方の手は、アヌスを弄っている。
「ん・・・あ・・・は・・・・・っ」
漏れ出る声を抑えられない。
思わず頬を、首筋にあるMr.Rの頭に摺りつけた。
「ほぐれてきましたね・・・」
その言葉が、この先に行われることを想像させて、ぞくりと震えた。
けれどMr,Rは急くことはしない。
前を触っていた手が止まり、乳首をそっと撫ではじめた。
「んんっ」
そして、御堂の身体にいくつも残る鞭のあとを、確かめるように撫で始めた。
まだ赤く腫れたそれに冷たい革の感触があたり、小さな小さな痛みが走る。
「ああっ。ん・・・」
その痛みすらも快楽となって自分を高めていく。
「・・・もう・・・」
アヌスは更なる高みを求めてひくついていた。
前ももう刺激を止められているのに、高ぶる一方だ。
「そうですね」
そういって、Mr.Rがコートの下から己のモノを引き摺り出した。
ごくり。
御堂の喉がなる。
そそり立ったものに、興奮する。
思わず物欲しげにあいた唇を見てMr.Rが小さく笑った。
眼鏡の奥が妖しく光る。
「そう。それでいい。欲望を隠さない貴方は、本当に美しい・・・」
そういうと、御堂の足を高くあげて、ぐっとその欲望を押し込んだ。
「ああっ・・・・・・・・。あぁ、はぁ」
広げられる痛みよりも、その熱さに打ち震えた。
気持ちいい。
どうしようもなく満たされる。
もう、御堂は止めることが出来なかった。
「ん。もっと・・・もっと、激しく・・・突いて・・・・・・」
めちゃくちゃに。
もっともっと欲しい。
何もかもを忘れるほどの、甘く、甘美な悦楽を。
Mr,Rが動きはじめる。
突かれるたびに声が溢れる。
飲み込めない唾液が、シーツへと落ちた。
どうしようもなく溢れる快楽に、御堂の唇が喜びに笑みの形に歪むのを、
Mr.Rは目の端に捕らえて、にいっと目の端で笑った。












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