D-1







「・・・佐伯」
その言葉に、我を忘れる。
自分は、これだけ散々痛めつけられているのに、
いつまでも目覚めようとしない御堂に苛立ちを覚えた。

「あんたは本当に、どうしようもない淫乱だな」
頭が冷える。
御堂の前から立ち上がった。
見下ろすと、御堂が顔をあげてこちらを見た。
「俺が躾けてやった時はあんなに抵抗したくせに、
Mr.Rにどうやってたらしこまれた」
足で御堂の腹を蹴り上げる。
「うぅ・・・」
身体を折り曲げて呻いた。
「お前は結局自分をイカせてくれるやつなら誰でもいいんだよ。
散々に苛められたくてどうしようもないんだろう。
俺から逃げたあと、何人の男を咥えこんだ。
最低の淫乱め」
そう言うと、御堂の髪を掴んで上体を無理やり持ち上げる。
「・・・いた・・・」
苦痛に歪む顔に、ぞくりと背筋が総毛立つ。
ここに来てからいつもいつも投げかけられた誘い文句よりも
痛みを訴えるその表情に性感が煽られる。
「なあ、御堂。
他の男に抱かれる時に俺の名前を呼ぶな。汚らわしい。
あんな男達と俺とは違うだろう。なあ、御堂。
何回も何回も何回も何回もお前の身体に教えてやっただろう。なあ、なあ」
大声でそう言いながら、頭を揺らす。
激しい痛みに御堂の口から苦悶の声が漏れる。唇の端から唾液が零れた。
ぱっと、手を離す。
どさりと体が落ちる。
ごん、と響く音の先に目もくれず、冷静に部屋を見渡した。
Mr.Rが用意した部屋、であれば、一揃いのものはすべてそろっているはずだ。
そう思って顔を巡らせて見れば、部屋の端にはきちんと鞭が一揃い置いてあるし、
ベッド横には、木で出来た古い物入れがあった。
大股でそこまで歩いて中を開ければ、様々な淫具が雑多に収められていた。
それらをいくつか手に取り、後を振り返る。
「姦淫の罪にはおしおきが必要だなあ、御堂」
苦痛に身体を九の字に折り曲げていた御堂が、ふいに押し黙った。



赤い縄で御堂の腕を後ろ手に縛り上げる。
全裸の広い胸を手でなぞり上げる。
いくつもつけられた痣に嫉妬心が湧いてくる。
それを心で持て余しながら一つ一つ爪できつく押さえつけると
御堂がそのたびに顔を顰める。
「いつもどんな夢を見てるんだ、御堂。
あいつらに犯されるたびに、俺にヤラれてるつもりになって善がってたんだろう。
でも御堂。足りないだろう、あんなんじゃあ。
あんたの欲望は底なしだから、もっともっと酷くいたぶられたくて
しょうがなかったんじゃないのか。こんな風に」
そう言って、バイブを濡らしてもいない後孔に無理やり押し込む。
「・・・、う・・・あ・・・」
振動音が耳につく。その後ろでうっすら聞こえる御堂の声は
悦んでいるのか、嫌がっているのか、分かりにくいほどにかすかだ。
御堂の顎を持ち上げた。
瞳は空ろに濁り、熱に潤んでいる。
それでもやはり、白磁のような御堂の頬、いっそ冷たくもみえる切れ長の瞳、
高くとおった鼻梁、思いのほか肉厚な唇、
すべてが整っていて、胸が締め付けられるほどにいとおしいと思った。
薄く色付いて立ち上がる乳首を羽で撫でるように優しく嬲る。
「ん・・・う・・・」
御堂が、その感覚に素直に身体を揺らす。
手を離すと、もっと、というように見上げてきた。
「さ、えき・・・」
白磁が赤く染まっていく。
中で跳ねるバイブの刺激に、前も立ち上がり始めてきた。
「・・・ちっ」
また強請るような表情を見せる御堂に、また苛立ちが湧く。
ちりちりと胸焼けのように、胸のうちがざわめくが、何を自分が求めているのかが分からない。
自分が見たいものは、
それじゃない。
それだけは分かる。
御堂の後孔で蠢くバイブを、足で踏みつけた。
ぐいぐいと奥へと押し込む。
「ああ、あああああ」
あまりに強い刺激は快楽よりも苦痛を生み、御堂の顔がまた歪んだ。
その表情に、少し何かが満たされるような気がした。
「何を悦んでるんだ、御堂。
優しく抱いてもらえるとでも思ったのか。このヘンタイ」
そう言って、先ほど取ってきた乗馬鞭を手に持つ。
「これは罰だと、いっただろう?」
そう言うと、鞭を御堂の身体に打ちつけた。
「ぐっ・・・」
痛みにまた身体を折り曲げる。
それでも容赦せず、もう一度振り下ろす。
ひゅん。
音が高く鳴り、御堂の身体に赤い筋が残る。
「う・・・ふぅ・・・」
痛みをやりすごそうとしてか、御堂の口から息が漏れる。
足で、御堂のモノを優しく踏みつけた。
「ん・・・」
堅くなったものからは、先走りがぬめっている。
それを塗りつけるように、やや乱暴に足の裏でぐりぐりと踏む。
「何度も言っただろう。
あんたは、鞭打たれて悦ぶヘンタイだったな。
ほら、ギンギンに堅くして悦んでる」
「う・・・」
御堂の口からは呻きしか漏れない。
足を離すともう一度鞭を振り上げる。
二度。
三度。
「あの部屋で何度も何度も繰り返し教えてやっただろう。
あんたは真性のヘンタイで、鞭に興奮して射精する淫乱だって。
ほら、ほら。なあ」
言いながら鞭の数を重ねていく。
あの日のように、御堂の身体はそのたびに震え、堅くしたそこからはねばねばと白濁が溢れてくる。
痛みと興奮に耐えられないといったように御堂が顔を横に振ったが、
その頬へも、軽く鞭を当てるとおとなしくなった。
「うっ・・・ぐ・・・い、いぁ・・・」
うつ度に聞こえるきつそうな声、歪む表情、すべてに興奮した。
そこにナイフがあったなら、身体を切り裂いてやりたいほどの衝動に駆られた。
もっと、
もっと、
もっと見たい。
いつしか手加減も忘れて、全力で御堂を嬲っていた。
触りもしない自分のそこはずくずくと疼きはじめている。
御堂のモノもまた、はちきれんばかりに大きく擡げている。
下からはバイブの振動音が暴力的に響いている。

「なあ、どういう気分だ御堂。
気持ちいいか。気持ちいいだろう。
ずっとこうされたかったんだろう」
顔を俯かせた御堂は何も言わない。
口元から、唾液が落ちていく。
ただ、酷く興奮状態にあるのは明らかで、一呼吸、一呼吸、息が荒い。
必死に酸素を取り込もうと、早く浅い呼吸が耳につく。
尖りきった胸の突起も赤く腫れている。
「いくらでも与えてやる」
そう言ってまた振り下ろす。
「うう、ああああああ」
悲鳴が飛んだ。
「そう。その声だ・・・」
もう一度。出来る限り強く。
「ああああああああああっ」
絶叫に変わる。
その声に克哉が笑みを浮かべる。
「もっと啼け」
「あああああ・・・」
枯れたのか、声が途切れた。





「イケよ」
最後の一振りに、びくびくと身体が数度跳ねて、そうして動かなくなった。









NEXT

back

inserted by FC2 system