B-2







後ろ手を革ベルトでまとめあげられ、首には首輪をつけられた状態で椅子に座らされている。
Mr.Rが来ない時間はたいていそうやって拘束されていた。
Mr.Rに調教される時間、Mr.Rが来ない時間、
どちらも永久と思われるほどに長く、歩みは遅かった。
一日に、たった一時間与えられる解放。
その時間だけが、妙に早く過ぎていく。
はじめに与えられるのは必ず苦痛。
それから、快楽。
そのあとにまた痛みが繰り返される時もある。
与えられるものの種類も遣りようも様々だったが、
必ずその順序は破られることがない。

痛みは楽だ。
それが罰だと思えば納得もいく。
それが鞭だろうが、針だろうが、嘲る言葉だろうが、打ち付けられるモノであろうが、
痛みであれば、ただ耐えればいい。
それは身体に疵を残すが、
それ、だけだ。
どんな苦痛にも、眉根を絞り、歯を食いしばり、耐える。
それは罰だから、すべてを受け入れ、受け止めて仕舞えばいい。
御堂の名を繰り返し頭の中で呼んで居ればいい。

だが、引きずり出される快楽は、自分を狂わせる。
散々与えられた痛みにぐったりとなったあとに、毎回薬や柘榴や何やらで無理やりに快楽を引きずり出され、
頭を朦朧とさせられて、
そうして抱かれた。
耳元で繰り返される、妙に甘い言葉。
安っぽい、美辞麗句。
「愛していますよ」
何度も何度も耳元で囁かれる。
執拗なまでに長く続く絡みつかれる。
食いしばり耐えようとするのに、身体の内から奇妙なほどに嗜虐の歓びが滲み出す。
拘束そのままに無理やり入れられる時もあれば、
まるで恋人でも抱くかのように、ベッドに連れ込まれることもあった。
Mr.Rが何をしたいのかが分からなくて混乱する。
訳も分からなずうめき声をあげて達せさせられた後、
また散々に鞭打たれる。
Mr.Rはいつでも笑みを崩さない。
張り付いた笑みは、何も語らない。
嘘で塗り固められた言葉を吐くときも、
罪を忘れないようにと繰り返し語るときも、
吐き気がするような愛を語られるときも、
何一つ本当が見えない。
朦朧とする視界の中、必死にその表情を見る。
だが、浮かべられるのはどうとでも取れるような薄い笑み。
そしてその表情のままにまた九尾の鞭を振るわれて、
意識が飛んだ。














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