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二人分の革靴の足音が高く響く。
それだけ、周りには何一つ音がない。
広い大理石の廊下を歩いていく。
殺風景で何もない、広い広い廊下。
いくつかの扉が途中にはあったが、すべて閉まっていた。
どの扉にも小さな小窓がついていて、
蓋を上げると中の様子が見えるようになっているらしかった。
木で出来た扉は、すべて立派な彫りが施されている。
「面白いものをご覧にいれましょう」
Mr.Rがそういって、一番奥の扉の前へと立った。
「さあ、どうぞ」
そう言って、小窓の蓋を持ち上げた。
扉に手をついて、中をのぞき見る。
赤い、赤い絨毯の部屋。
中は思いがけない広さだった。
遠くのほうで、数人の男が裸で絡み合っているのが見えた。
一人の裸の男を、他の男達が陵辱している。
裸の男は首に鎖をつけられ、天蓋付の大きなベッドにつながれていた。
------まさか。
嫌な予感がして、後ろのMr.Rを振り返った。
Mr.Rはその予感を肯定するように、にこりと小さく笑みを浮かべた。
克哉の眼が大きく見開かれる。
助けようと扉を開けようとするが、鍵がかけられているのがびくりともしない。
「御堂!御堂!!」
がちゃがちゃとノブを回わし、無理やり開けようとするがまったく手ごたえがない。
「御堂!」
扉をがんがんと叩くも、中には聞こえてさえいないようだ。
「無駄ですよ」
後ろから、Mr.Rが扉を叩く手に、手を這わせた。
「この扉は、あの部屋を『視る』ためだけの扉。
向こうとこことは、一度しめてしまえばつながってはいません。
ほら、人のプレイを覗き見するのがお好きな人っているでしょう?
そういう方のためののぞき窓ですから、
どんなに叩いたところで無駄ですよ」
耳元でそうささやく。
かっとなって克哉はMr.Rの胸倉を掴んだ。
「今すぐ御堂を離せ。あいつら・・・殺してやる」
「何をそんなに怒ってるんですか。
我を忘れるなんて、貴方らしくもないですね。
それに・・・
貴方もずっとやっていた事じゃないですか」
そう言われて、掴んでいた手が、落ちた。
「貴方も、散々甚振って、監禁して、陵辱していたのでしょう?
同じじゃないですか。
何をそんなに怒っているんですか?」
自分も、今ああしている男達となんら変わりないのだと言われ、
拳が白くなるまで握り締めた。
あれだけの責め苦を与えて、御堂の心を壊したのは確かに、自分だ。
「だが、もうこれ以上御堂を苦しめるのは・・・!」
「大丈夫。苦しんでなどいませんよ。
それに、彼らの順番が終わったら、次は貴方に会わせてあげますよ。
ほら、もうそろそろ、終わりです」
視線を返すと、御堂の前に立ちふさがっていた男の腰がひいたのが見えた。
御堂の顔が見える。
白濁を、口から垂らしている。
表情までは伺いしれないが、何かを呟いたようだった。
後ろの男もまた、一瞬身体をびくりと震わせると御堂から身体を離した。
御堂の身体が弛緩して床に落ちる。
男達の笑い声が聞こえて、男達は奥へと消えていった。
御堂はただ一人、床に崩れたままぴくりともしない。
「ほら、貴方の順番ですよ」
Mr.Rがそう言った。













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