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御堂が消えて数日。
もしかして、御堂が顔を出すかもしれないと思い、
MGNも退職することにした。
大隈専務からは激しく引き止められたが、表情一つ変えず退職届を置いて帰った。
すべてを無に帰す。
そう決めた。
御堂は自分を望まない。
その答えが分かったのだから、あとは姿を消すだけだ。
無理やり引き止める声を振り切って、ひさしぶりにとりあえず自宅へ戻ろうと帰り道を歩いていた。
途中には、あの、公園がある。
ここで眼鏡を渡された。
それがすべての、きっかけだった。
(御堂・・・)
何度も呼んだ名をまた心の中で繰り返して。
しばし、公園の前で佇んでいたが、やはり家に戻ろうと歩きはじめた。
「こんばんは」
聞き覚えのある声に、体が固まる。
できることならば、二度と聞きたくなかった声。
ゆっくりと振り返った。
「おひさしぶりですね」
そこに立っていたのは案の定、Mr.Rと名乗る金髪の不気味な男。
「何のようだ」
眉をひそめて不機嫌な声で尋ねる。
この世のものとも思われぬ美貌が、薄く笑った。
「貴方にお会いしたくて」
平然と言ってのける顔に、虫唾が走る。
「いけしゃあしゃあと、酷い嘘を吐く。
お前が何もなしにこのタイミングで現れるとは思えない。何のようだ」
「タイミング・・・ああ、それは御堂孝典さんのことですね」
案の定、その名前が出てきた。
「気になりますか」
ぐい、と間合いをつめられて、耳元で囁かれた。
左手でつよく肩を押して押し返す。
「俺にはもう関係のないことだ」
そう言って、踵を返し家へと戻ろうとした。
「おや、あきらめてしまわれるのですか?」
後ろから声をかけられる。
「・・・どういう意味だ」
振り返らないままに問いかけた。
「御堂孝典さんに、お会いしたくはないですか?」
甘い甘い誘いがかけられる。
はっとしたが、振り返りはしない。
「・・・会わないほうがいい」
押し殺した声で、耐える。
会いたいと、願ってはいけない。
そう、誓ったばかりなのだから。
「ふふふ・・・。それでは言い方を変えましょう。
御堂さんは私が拉致、拘束、監禁してあります。
さあ、どうですか?
お会いしたくはないですか?」
「な、お前・・・!」
思わず振り返り胸倉を掴む。
「御堂をどうした!」
「内緒です。
でも、貴方が私の元に来てくれるのならば、会わせて差し上げましょう。
どうです?お会いしたくなりましたか」
皮手袋の指で、つぅ、と頬を撫でる。
「・・・分かった。
どこへでも連れて行け」
憎しみに満ちた眼が自分をにらむのを見て、Mr.Rは心底嬉しそうな表情を浮かべた。















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